MECM で M365Apps の更新プログラムが必要と判定されない

Last Update:

こんにちは、Office サポートの西川 (直)です。

MECM (Microsoft Endpoint Configuration Manager) で M365Apps (Microsoft 365 Apps for enterprise) の更新プログラムが必要と判定されない現象について説明します。


現象

MECM で M365Apps の更新プログラムが必要と判定されず、更新が適用できない


対処方法

以下の 3 つの条件を全て満たしているかをご確認ください。

1) Office の更新に使用する COM IF のレジストリキーが存在する
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Classes\CLSID\{B7F1785F-D69B-46F1-92FC-D2DE9C994F13}

本レジストリは、MECM から更新プログラムを受信できるようにする設定が反映された後、OS を再起動することで作成されます。


2) VersionToReport より新しいビルドを展開しようとしている、または、UpdateChannelChanged が True である
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Office\ClickToRun\Configuration\VersionToReport
ここには、16.0.12345.12345 のような 16.0 部分は固定のビルド番号が入ります。

HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Office\ClickToRun\Configuration\UpdateChannelChanged
初期値は False であり、後述のように UpdateChannel が優先度により変更された際に True となります。その後、更新試行を行った後に False に戻ります。

通常、チャネルの変更直後を除いて UpdateChannelChanged は False のため、VersionToReport の優劣にしたがい更新が行われます。


3) UpdateChannel の URL に展開しているチャネルの識別子が含まれる
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Office\ClickToRun\Configuration\UpdateChannel

チャネルの識別子
最新チャネル : 492350f6-3a01-4f97-b9c0-c7c6ddf67d60
月次エンタープライズチャネル : 55336b82-a18d-4dd6-b5f6-9e5095c314a6
半期エンタープライズチャネル (プレビュー : b8f9b850-328d-4355-9145-c59439a0c4cf
半期エンタープライズチャネル : 7ffbc6bf-bc32-4f92-8982-f9dd17fd3114

UpdateChannel は UpdateChannelChanged が False である場合、以下の優先度を上から順に評価します。

優先度1) GPO の “更新プログラムのパス”
HKEY_LOCAL_MACHINE\software\policies\microsoft\office\16.0\common\OfficeUpdate\updatepath

優先度2) GPO の “チャネルの更新”
HKEY_LOCAL_MACHINE\software\policies\microsoft\office\16.0\common\OfficeUpdate\updatebranch

優先度3) Office 展開ツールの Updates 要素の UpdatePath 属性
HKEY_LOCAL_MACHINE\Software\Microsoft\Office\ClickToRun\Configuration\UpdateUrl

優先度4) Microsoft 365 管理センターで Microsoft 365 のインストール オプションを管理する の取得頻度
HKEY_LOCAL_MACHINE\Software\Microsoft\Office\ClickToRun\Configuration\UnmanagedUpdateUrl

優先度5) Office 展開ツールの Updates 要素の Channel 属性
HKEY_LOCAL_MACHINE\Software\Microsoft\Office\ClickToRun\Configuration\CDNBaseURL

現在の UpdateChannel と値が異なる場合、評価された値に上書きされ、UpdateChannelChanged が True となります。


FAQ

UpdateChannel が変更されるタイミングを教えてください
タスクスケジューラーに登録されている Office Automatic Updates 2.0 が実行する OfficeC2RClient.exe の中で、前回の構成試行より 24 時間以上経過している場合に構成処理を行います。
このため、タスクスケジューラーを手動実行いただいても即座に実行することは出来ません。また、この時間を変更することは出来ません。

優先度1 や 3 が入っている端末に MECM から更新プログラムを展開できますか？
優先度1 は “未構成” に変更してください。優先度 3 の場合、UpdateUrl レジストリを削除していただくか、優先度 2 の GPO の “チャネルの更新” を代わりにご利用ください
なお、”チャネルの更新” を設定すると、MECM もしくはインターネット上の Office CDN から更新プログラムを取得するようになります。MECM で管理しない端末に設定する際はご留意ください。

UpdateChannelChanged が既に True になっているため、優先度にしたがって設定を変更しても端末に反映されません
UpdateChannelChanged を一度だけ False に書き換えてください。

優先度4の UnmanagedUpdateUrl のチャネルを変更したいのですが、Microsoft 365 管理センターで半期エンタープライズチャネルを選択できません
UnmanagedUpdateUrl レジストリを削除していただくか、優先度 2 の GPO の “チャネルの更新” を代わりにご利用ください
なお、”チャネルの更新” を設定すると、MECM もしくはインターネット上の Office CDN から更新プログラムを取得するようになります。MECM で管理しない端末に設定する際はご留意ください。

MECM から更新しているのに、優先度4 の UnmanagedUpdateUrl レジストリが設定されているのはなぜですか？
方法3 の Office 展開ツールでのインストール時に OfficeMgmtCOM を True で設定していない場合、端末に MECM から更新する設定が反映される前に M365Apps の自動更新が動作した可能性があります。

MECM から更新したいのに、Office CDN から更新されてしまいます
クラウド更新 が有効になっている可能性がございます。
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Policies\Microsoft\cloud\office\16.0\Common\officeupdate\IgnoreGPO が 1 の場合、全ての更新設定よりクラウド更新が優先されます。

クラウド更新 が不要な場合、Microsoft 365 Apps 管理センター において、クラウド更新に進みます。
もし、クラウド更新が有効となっていない場合、有効化しないでください。
クラウド更新が有効な場合、各チャネルの設定 - クラウド更新のレビュー において、”クラウド更新を通じて管理を非アクティブ化できます” をクリックしてください。フォームの入力画面が表示されますので、記載を進めて送信してください。

そして、即座に反映させるため、GPO 等にて、HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Policies\Microsoft\cloud\office\16.0\Common\officeupdate\IgnoreGPO を DWORD の 0 に指定して配布してください。

COM IF のレジストリキーが作成されません
何らかの影響により、端末で COM 登録が行えていない可能性があります。

対象の端末で、PowerShell を管理者権限で起動し、以下の 2 行を実行いただき、エラーが出るかをご確認ください。

1
2
$comCatalog = New-Object -ComObject COMAdmin.COMAdminCatalog
$appColl = $comCatalog.GetCollection("Applications")

エラーが出る場合
OS 観点で調査が必要であると考えられます。

エラーが出ない場合
以下の手順をご実施ください。

  1. 以下の REG_DWORD レジストリに 0 を設定します。
    HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Policies\Microsoft\office\16.0\Common\officeupdate\OfficeMgmtCOM

  2. スタートメニューの検索にて、「サービス」と検索し、サービスを起動します

  3. “Microsoft Office クイック実行サービス” を右クリックし、”再起動” を実施します。

  4. 以下の REG_DWORD レジストリに 1 を設定します。
    HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Policies\Microsoft\office\16.0\Common\officeupdate\OfficeMgmtCOM

  5. “Microsoft Office クイック実行サービス” を右クリックし、”再起動” を実施します。

  6. COM IF のレジストリキーが作成されるかをご確認ください。


参考資料

How to manage Office 365 ProPlus Channels for IT Pros

2023/12/27 Update
一部記載を変更しました

2024/3/4 Update
一部記載を修正しました

2024/11/28 Update
クラウド更新について追記しました

本情報の内容 (添付文書、リンク先などを含む) は、作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。